盗み出された『譜面』
マイクは手順通りに押収品の写真を数枚テーブルに並べた。
「お聞きになってるとおもいますが、これは、こちらの教会の信徒の方たちから、保安官に贈られた『置物』の中にあった盗聴機械です」
「へえ。これが」
初めて見ましたという男はその写真に目をやり、さして興味もなさそうに、わたくしは彼らに教会は解放しているが行動まで責任は持てない、と言い切った。
「・・なるほど。まあ、そうでしょうね」
「そう。なにしろわたくしはあの教会を建てはしましたが、そこの信徒でもありませんし」
たしかにそうだ。
ここの教会は彼が建て、そこを自分たちの楽園だと言い切る人間たちが集まって管理運営し、おまけに名簿上ではたくさんの上流階級の人間を信徒として抱えているが、その活動の中にも名簿にも、ノース卿の名前は出てこなかった。
「では、―― こちらはどうでしょう? ローランドがここから盗んだ『譜面』です。 これにはローランドとは別の指紋がありました。 ―― バーノルド事件の被害者のひとり、サラ・クロフォードの指紋です」
端末機にサラの写真をだして、横におく。
「ご存じですか?」
「いや、しらない」
「見たことは?」
「ない」
「ですが、ローランドはこの譜面を、こちらから盗み出したと言っています。 この『譜面』も、ご存じないですか?」
「いや、―― これはわたくしのコレクションだ」
意外にも、あっさりと認めた。
「では、なぜサラの指紋が?」
「触ったのでしょうな。わたくしの知らない間に」
「コレクションはどこに保管されてるのですか?」
「これは、コレクションルームの保管庫に」
「そこは誰でも出入りできるのですか?」
「いいえ」
「なら、どうやって彼女の指紋が?」
「ローランドが触らせたのでしょう」
そうくるとは思っていた。