自慢の部屋
かつん、と先をゆく執事の靴音がとまり、がちゃりと重い金属を動かす音がした。
ひびく軋み音とともに、いきなり ―― 白い視界がひらける。
まぶしさにマイクは何度もまばたきをして、ようやくしっかりと目をあけた。
「・・・・わ、お・・」
そこはどこかの高級住宅のような白い内装の部屋だった。
床も壁も白いなめらかな石。
天井から豪勢なシャンデリアがさがり、白い光沢のある布をはった大きなソファが置かれている。壁際にグラスやカップの入った背の高い棚。バーカウンターらしきものがいちばん奥にみえる。
だが、目がちかちかするほどまぶしかったのはその部屋のせいではなく、大きくひらかれた窓のせいだった。
部屋の左手になる壁はすべて大きな窓になっており、ひろがる景色は最高のものだ。
木々のむこうに、光り輝くマーノック湖と、そびえたつ先端に雪をのせた山脈。
「きれいだなあ」
「・・・・・」
思わずこぼれた感想には、マイクの後ろの男は反応しない。
代わりのように、窓際に立っていた男が振り返り、そうでしょう、と微笑んだ。
「 はじめまして。わたくしが当主のハロルド・デ・ノースです。 ここはお客様に一番喜んでいただける部屋で、わたくしの自慢でもあります。 ―― フランク、お客様にお飲物を 」
それを辞退したマイクにしっかりとした足取りで寄ってきた男は、歓迎の意のようにひらいた手をそのままさしだした。
それをにぎれば、意外なほど力強くにぎりかえされる。
――― ちょっとまてよ・・・
マイクは自己紹介をしながら、目の前の男をあらためる。