『教会』の捜索許可
城の敷地手前から、『立ち入り禁止』の黄色いテープがしっかりとはりめぐらされ、庭のあちこちでは写真を撮ったり距離を測ったりする人間があふれかえっていた。
傾いて閉まらないであろう外門の間を車で曲がり、城に続く石畳の道をのぼってゆく。
警察関係者の車が何台もある場所にとめておりると、芝庭のむこうで掃除機のような機械を地面にあてる作業に目をやったバートが、土の中か、と聞く。
「地下室とか、『なにか』が埋まってないかの確認作業だ」
この捜索の指揮を任された男がうなずく。
「『教会』自体の捜索許可はまだなのかよ?」
見上げた城を観光客のようにカメラにおさめていたケンがマイクをみる。
「あのな。 ―― あの『置き物』をつくった信徒たちは、教会横の『作業場』でそれを作ったっていうし、まだ、教会の方にはいりこむ口実が見つかっていない」
車の屋根にもたれていうと、ケンはなぜかマイクの顔を撮影し、そのままむこうに行ってしまった。
ふたりのやりとりに無関心なバートがケンとは別の方向へ歩き出す。
マイクが聞く前に、あいつは別行動だと教えられ、すこし肩の荷がおりたので、あらためて上着のポケットにある書類を取り出して確認し、バートのあとを追った。
見上げた外壁は削りの荒いグレーの石で、そのほとんどを蔦が覆っている。
冬もせまったこの時期にそれらはほぼ葉を落とし、ヒビのはいった石の壁がそのままみえる。
玄関となる城の正面には、左右対称的に太い柱があり、その土台にほどこされた彫刻は劣化して表面をけずられ、あるいは剥がれ落ち、元のかたちがほとんどわからない。
城の入り口についた大きな中門は大きく開け放たれたまま赤く錆びついており、車で通りぬけた門のように傾いてはいないが、もう閉じることはできないだろうと思わせた。
「きれいだな」
思わずマイクがつぶやいたのは、建物はひどく荒れているくせに、中門から玄関へと続く石畳の道の両側は、うそみたいにきれいに整えられていたからだ。
藁色に枯れた芝はきちんと手入れをされているものだし、ツゲの生垣と小さな花を咲かせる花壇が色ごとに分けられて配置され、左右対称をなしている。