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今でも



「そういや、バーノルド事件の捜査責任者に、パパがなるって噂きいたぜ」


 となりでわらうこの男が、先日ようやくニ十歳になったのを思い出す。


 初めてノアに紹介されたときは、なんの冗談かとも思ったが、ノアはケンをはじめから信用している。

 そしておもしろいことにケンは、髭面の少し太めの男にほめられると一瞬、照れたような困ったような顔をみせるし、ノアの家で飯を食べるときなど、どこの好青年だという態度で夫人に接する。 


「 ―― ノアの家に行くとき並みにおとなしくしてろよ」


「ノアの家?そりゃあそこは心地いいから、おれだってその場に合った態度になるさ。 ―― あの城がどんな場所かは、入ってみるまでわかんねえ」


「おいバート、おまえ、こいつのしつけしてんだろうな?」


「野生動物をしつける趣味はねえ」


「・・・・おまえら、ほんっと、おとなしくしてて・・・」

 胃が痛くなるような気持ちでギアをあげた。

 






 バーノルドの森は、国道から車で出入りできる入り口が決まっている。

 監視所の保安官たちに手をあげてみせ、そのまま奥へと続く細い道をすすんでゆく。

 常緑樹から落葉樹の地帯へとぬければ、むこうに灰色の建造物が現れる。

 

 周りをぐるりと囲んでいただろう高い石の壁は長い時間に耐えられず崩れ、ただの石積みとなっている。

 その壁沿いに車をゆっくりと進め、積まれて苔むした石がとぎれた場所から車をのりいれた。


 そのまま進んだ奥には、昔は水を噴き出していたろう石像がくすんだ気配で立ち、噴き出した水をうけていたはずの池には、積もった枯葉が土となって、細くさびしい草を育てている。



「昔はさぞかし立派だったんだろうな」


 ウィルの父親からとった調書の内容を思い出しながら、つい口にするとケンが笑う。


「今でもこんな立派じゃねえか。塀はくずれてるけど城のこの土台の高さを見ろよ。 入り口はあの正面の扉だけだ。普通はどこかに台所や地下につながる裏口があるもんだが、この城にはない。外壁には窓もなし。蔦におおわれたこの壁が城の本当の塀なんだ。 ―― 中に立つ見晴台は四方にあって砲台がある。今じゃそこに防犯カメラがついてるわけだ」


「・・・よく知ってることで・・・」

 半分本気でほめれば、ウィルが城の見取り図を持ってきたと言う。


 警察にはそんな資料ない、と言うのはやめておいた。

 


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