横たわる
ジョニーの長い話ここまで
ウィルが伸びをした。
「あ~いやだなあ、あの若い保安官をからかったときのサラ、まるであの森に集まるっていう《魔女》みたいな印象だよね。ノース卿の信徒になるとそうなっちゃうのかなあ」
「魔女というよりは、・・・」
ジョニーが手にしたカップをのぞきこむ。
「・・ぼくは、『狂信者』という言葉をとるよ」
視線をあつめ、白髪の男は説明しはじめる。
「彼女たちは、自分の意思でそこに行き、死の直前まで、健康的に生きていた。なのに、死に際して抵抗したような痕跡がまったくみうけられない。不意打ちっていうやりかたもあるだろうけど、彼女たちの首はひどくきれいに切断されてる。切り口はほぼ水平。骨まで断ってる。 立ったまま、後ろから振り下ろした刃物でなら、もっとななめにはいるだろうし、もっと汚い状態になるはずさ。つまり、 ―― 彼女たちはどこかに横になったまま、上からすごい力で振り下ろされた刃物で首を断たれたんだと思うよ。 ―― もうひとつ付け足すと、体のほうからは、頭や筋肉を麻痺させる類のクスリの反応はない。ということは、まあ眠っていたのかもしれないけれど、何の抵抗もなく、彼女たちは自分の身をさしだしたわけだ」
「ぜったい、寝てたと思う。何の抵抗もなく殺されるのを待ってるわけねえだろ?ただでさえ、軟禁状態なんだぜ?」
我慢できずに口にしたザックは、二コルに渡されたカップの中のコーヒーをにらんでいる。
「・・・それはあるね。ぼくは思ったんだけど、もしかしたら、反応の残る強い化学物質ではなくて、お茶とか、お香とか、すぐに体から出てしまうようなもので、眠気をさそう作用のあるものをつかっていたかもしれない。とにかく、リラックスさせるためにね」
「自分の首がはねられるのにリラックスなんてできるかよ」
不満げにコーヒーをすするザックに、ジョニーは、息をはきだすように答えた。
「そう。―― だからさっき、『狂信者』って言葉をつかったんだ。翻訳してくれた先生に教えてもらったけど、《当時》の考えとして、生贄に選ばれることはその一族の中ではとても名誉なことであり、神様に選ばれた『価値のあるもの』になるらしい。だから、神様にさしあげる前まで、彼女たちは最上級の扱いになるわけさ。彼女たち自身もその神様を信じていたとしたらきっと名誉なことだと考えただろうね。 ―― だからといって、ぼくだったらあんな言葉は、簡単に口にはできないけど・・・」
ついに、今日なのよ!
すみません。長い話でした・・・