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№32 ― ふたつの理由

残虐表現あり。ご注意を




№32




「 さて、一番初めのケイト・モンデルは、わざわざ逆さまにされてるのを発見された。たくさんの人間に発見現場は荒らされたけれど、そこが殺害現場じゃないのは一目瞭然だった」


 どうだった?とジョニーの視線を受けたウィルが、ゆっくりとうなずく。


「たしかに。―― 血の跡らしいものを見た覚えはないよ」


「そう。あそこは殺害現場じゃない。 どこかからあの体を持ってきて、あそこに何らかの意味で、あの形でおかれたんだ。遺体の下の地面には、ほんの小さな血だまりしかなかった。いいかい?地面が血を吸ったわけじゃないよ。  あそこにつるされた時点で、ケイトの遺体には、ほとんど血液が残っていなかったんだ。 ―― ぼくたちは当時、そのことについて二つ、理由を考えた。一つは、遺体を軽くして、運びやすくするためじゃないかっていう考えだ。もうひとつは、犯人が、わざとぼくらにそれを示したっていう考えだ。これは、おたくの班長にも前、話したことがある。犯人の感覚でいうと、《ボトルが空である》のをしめそうとした。―― つまり、犯人は、《遺体には血が残っていない》、ということを、ぼくらに示したんじゃないかってね」



  「・・・意味、わっかんねえ・・・」


 トイレからもどったザックは、みなの視線をうけ、「スッキリしたから何の問題もないよ」と宣言してからニコルの横にもどっていた。



 理解できなくてあたりまえだし、怒ってもいいんだとジョニーに優しく諭された新人は、恥ずかしそうに両頬を叩いてから、ジョニーに話の続きを促していた。





「・・・うん、ぼくもいまだにわからない。でも他の場面であんなに手のかかることをする犯人が、意味のないことなど、するわけはないんだ。 ―― この場合、犯人は、遺体に血を残していないと、ぼくらに示したかった。その体には生前、ひどい扱いのあとはない。ほかの体も同じだよ。彼女たちは、いきなり首をきりはなされて、ほとんど血を失った体と、前回の被害者のミイラ化した頭というおかしな組み合わせにされて発見されてる。―― 頭の方が、どうしてあんな状態なのか、それはまだわからないからおいておくとして、サラのうたう『呪文』によって、身体から血を抜かれた理由はわかった」


「『供物の、身となる土は大地に返し、身をとおる水であなたを得たい』ってやつだね」

 ルイが重い声をだす。


「そう。『身を通る水』を抜き取られた体は、大地に返された。そして『供物は最上のよろこびに、魂を月までのぼらせる』。頭が空の上に向けられている理由だ」


「『月』ね。ローランドの三部作。そして誰かさんのご先祖は月を相手に会話する『神官』だったってきいたな」


 ウィルの言葉にジョニーはうなずく。



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