ひどい扱い
残虐表現あり。ご注意を
「―― そこにはサラもうたった、『供物の、身となる土は大地に返し、身をとおる水であなたを得たい』、『あなたとこの供物はひとつになり、供物は最上のよろこびに、魂を月までのぼらせる』っていうのがあった。 ―― まるで、『供物』が、《神と一体》となることを目的にしてるみたいだって先生は言ってたよ」
ジョニーは立ち上がり、自分の端末機を操作して、みんなにその画面をむけた。
ザックが息をのむのがわかった。
「―― 何度見ても信じられないが、これがバーノルド事件の最初の犠牲者だ。・・・こんなひどい扱い、普通じゃ考えられないだろう?それもあって、うちでははじめ、この遺体の扱い方自体に何か意味があるんじゃないかって話になったんだ。そして、その、殺し方についてもね」
ウィルが、子どもの時に実際目にした遺体がうつる機械を、静かに見つめている。
ジョニーは空いた方の手を、大きく振る。
「知っての通り、被害者は生きたまま首を切断されている。こりゃなんだ?いつの時代の処刑法だ?残虐で、ひどい悪意とか恨みとかで、相手を恐怖に突き落とすイメージだ。ところが、ここにつるされたケイト以外の遺体には、手足はもちろん、どこにも縛られたような跡がない。争ったとか、被害者が何かに抵抗したようなあともなくて皮膚や爪は、健康で清潔なままだ。そんな女性たちが、一気に首を落とされる殺され方をしてるんだ。首以外に、傷はみあたらず、血がほとんどなくなってる以外におかしなことをされた形跡もない。つまり、彼女たちは行方不明になってから殺されるまでは、丁寧な扱いをうけていたんだ。なのにそれが、なぜこんな殺され方を?」
「殺害死体を楽しむ、頭のおかしいやつだからだよ」
専門学生の時に講師にそう教えられたザックは、ジョニーをにらみながら言った。