引き取り
「・・・げんじつ・・だよな?」
赤く汚れたエミリーの頭は、先ほどまでの様子が嘘のように顔にシワをきざみ、液体から取り出したとたん煙をふきだしながら一気に縮みはじめた。
慌てるザックに、静かに下に置くよう指示したルイは、カメラを用意する。
置かれた頭はさらに、ぱりぱりと嫌な音をだしながら、ひからびてゆき、最後は森で見つかった他の被害者と同じ状態の頭部となった。
「 ―― 見てみろよ。バートが眉間を撃ったのに、痕がないよ」
あの人こうなるってわかってて撃ったのかな、とルイが写真を撮りながらザックにしめす。
ザックが何か言うまえに、その《匂い》が鼻をつき、「やっぱりそうだよな」と顔をあげたルイの前に、いきなりワクナが立っている。
「 ―― まだ、『悪霊払いの銃』を持ってる方がいらっしゃるなんて、驚きでしたわ」
指に挟んだ煙草をふってみせると浴槽に寄り、よろしいかしら?とルイとザックにきいた。
なにが『よろしい』のかわからないザックの目の前で、浴槽が大量の白い煙に包まれ、ゴウ、と風がまきあがるような音がしたと思うと、煙ともども一瞬で消えた。
「言っておくけどさ、写真を消すのはなしだから」
ルイがエミリーの頭部を上着につつみながら怒ったようにいうのに、ワクナはザックをみて肩をすくめた。
「あなた方が必要とされないものだけ、引き取りにきましたのよ」
『魔女』の言葉をききながら、ザックはこの先、どんなマジックショウをみても今日の出来事より負けるだろう、と汚れた自分の両手を見つめた。