儀式の生贄
ルイがみんなを代表して口にする。
「それって、サラもあの《呪い》を実行する組織の一員で、教会ではローランドが真似をした《儀式》が行われていて、その《儀式》では、《生贄》をささげていた。サラはその《生贄》のためのに呪文をうたって、城にまだ住み着いていたローランドは、それを録音した。ってことかな?」
でもさ、でも、とザックが口をあける。
「サラがその《儀式》に出てたって証拠はどこにもねえじゃん」
ジョニーは指をむけ、「そこだ」と言った。
「彼女が森の中で練習してるうたを聞かれたとき、どうして相手をあんなふうに脅したのか?こたえは、うたの『言葉』にあるよ。さっきジャンが『だって生贄って、』といいかけたけど、きみはなんだと思った?いいかい、ぼくはその『生贄』が、子犬ではないことを知ってる」
「・・・牛、とか?羊?」
「ああ、ザック、きみの反応は素直でよろしい。だがそれもはずれだ。・・・原始宗教においてはどこの国でもありえた事実で、伝説やなにかでも必ず出てくる話だよ。―― ローランドはノース卿のところで行っていた《儀式》を見たのか、参加していたから、それをあそこで真似てたっていうのが、きみたちの見解だろう?」
ジャンがうなずくのにひと息ついたジョニーは、少し休憩だというようにカップに手をのばし、今度はゆっくりとはなしだす。
「それは正解だ。・・・ローランドが、なんと今日になって、自分のパーティーは、ノース卿のところで自分が体験したものを真似したと、いきなり主張しだしたよ」
これは警備官たちには初耳だった。
「だけどあの『教会』の『信徒』ではないって言ってるし、自分が主催したパーティーの出席者は、譜面といっしょに盗み出した《名簿》に載っていた人たちを誘ったって言ってる。きみたちが考えた通り、あの参加者たちは、ノース卿のほうの『儀式』に出ていたんだね。ところが・・、」と、カップをテーブルにおいた。
「ローランドはその名簿を燃やしてしまったって言うし。ノース卿の『集会』の細かいところを問い詰めると、手のひらをかえしたように、何もしゃべらなくなっちゃってね。ぼくは一度だけローランドと直に話す機会をマイクにもらえたんだけど、そのときに、サラのうたの意味を彼に直接ぶつけてみた。そうしたら、彼が震えながら口にしたんだよ。ノース卿は今でもバーノルドの森の『司祭』なんだってね。そこで、じゃあ司祭である彼はどういうことをしていたのかってきくと、ほとんど泣き出した。『これ以上は《儀式》について何も言えない。サラは自分で自分の為にうたうことになったんだから』って。―― この意味、わかるよねえ?」
「まて。ジョニー、はやまるな」
ジャンが嫌そうな顔で片手を立てたのに、伝わらなかった。
「『生贄』のためにうたってるサラが、『自分のため』にうたう?それはもう、ノース卿の《儀式》で『生贄』とされた『自分のため』っていう意味にほかならないよ。 だとしたら? そう、それ以外のとき彼女は誰のためにうたっていた?それはきっと、―― 自分と同じような『バーノルドの事件の被害者たち』のためだ」