浴槽の中
「 っ、寄るな!なんだ?『魔女の煙』の効力じゃないな。からだが・・・」
「しびれるって? さっきクロードにもおなじこと言われたし、どうやらおれは、 ―― おまえらを『捕まえ』られるらしいぜ」
すっと腕を持ち上げると、のけぞるように階段に尻をついた道化はそのままずりあがるように逃げようとしたが、ケンが足をつかむ。
獣のような叫び声が、『道化』の口と、階段の上に置かれた《浴槽》から響き渡った。
「 そいつを下に落とせ! 」
ずっとようすをみていたバートがいきなり怒鳴り、それが合図のように、皆いっせいに階段の上をめざす。
「ウィル!そいつをみはってろ!」
階段からひきはがすように足をひき、そのまま『道化』をつかんだケンが下にいる男に放り投げる。
受け止めもしない男は、不満そうな声をあげつつ、下にとどまった。
最初に浴槽についたケンがそれをのぞきこみ、めずらしく一瞬戸惑ったような顔をしてから、銃を中にむけた。
「・・この匂い・・」
マイクがうめき口元をかくし、ザックは息をとめたいのをこらえる。
「ジェニファーを!」
かけよったニコルが迷いもなく浴槽へ手をいれた。
そうそくのあかりでさえ、その中の様子はみてとれ、正直ザックは手をいれるのが怖かった。
―― バカか、おれ、このためにここに来たんだぞ
自分にいいきかせ、二コルに続いてどろりとした黒い液体に両手を突っ込んだ。