わたしの物語が
「 いいか!わたしをみくびるな! この場所をあのこうるさい鬼どもから取り上げたのも、《王》を復活させたのもこのわたしだ! 閉じ込められた精霊のふりをして、マデリンもハロルドもおもしろいほど思い通りに動かせた。 ところが、―― 精霊は、封印を解いてやったわたしの言うことなどきこうとせず、わたしを格下扱いしたうえに、すべてのお膳立てをしてやったわたしのことなど無視し、自分を解放したのは《人間》のゴードンだとぬかした。そのゴードンは、『王』にじかに会うと、《願い》をきかれ、命を絶ったつぎには格のたかい悪鬼として生まれ変わりたいと言って、それは果たされた」
階段下に転がったウィルが、最悪な自殺だ、とジャンの手をかり立ち上がる。
「悪鬼として生まれ変わる・・って、あのクロードみたいに人間の姿で?」
ザックが不安げにつぶやく。
「『果たされた』ってことは、もうすでに悪鬼ってことなのか?」
二コルがマイクをおこしながら顔をしかめる。
後ろにいたケンが、「教会にいた、『ゴードン』に改名した男か?」というのに、ザックが、あ!と声をもらす。
「そうだ。 ―― ハロルドのまわりにいた人間はみな悪鬼だ。そいつらが『呪い』をかける『役』だったのに、わたしが知らないところで余計な事をし、ハロルドがわたしを裏切っているのをずっと黙っていた・・・。 勘違いした裏切り者のハロルドが、みずから『王』となってここで『花嫁』をとるなんて考えた。 ―― もう、・・・『舞台』はめちゃくちゃだ! ・・・せっかくわたしが描いた『王』と女たちの美しい《物語》が、・・・人間であるハロルドが『王』になりすましたことによって、人間のいうところの《事件》になってしまった。 ・・・美しい物語はこの場所とバーノルドの森でのみ許されているのに・・・わたしのつくった物語とは違うものになっていく ―― 」
こんなはずじゃなかったんだ!とさけびマントをはらった。