№57 ― 『足りない女』― ジェニファー
№57まできました!あと少しです!
№57
ニコルが腰の銃をさぐりながら、ザックの前に出る。
「あの、マント野郎、さっき劇場でへんな映像みせたやつだ」
「わかってる。あせるな」
横に立ったルイが自分の銃を下へむけるのをみせ、ザックも同じようにするよう目で促す。
マイクがずかずかと進み出て、「ジェニファーはどこだ?」と銃をむけた。
階段の中ほどに立つマントの男は、フードの中の顔を光にむけた。
濃い影の目立つやつれたそれは、悪鬼のクロードが言った通り、ノース卿のところで会ったあの執事だった。
「あの女は、まだ《足りない》女だ。 あの、浴槽の中にいる」
《道化》である執事は、階段の上におかれた『棺』をさす。
「浴槽?・・・棺じゃないのか・・・まさか、あの《黒い》のは、血が固まってこびりついてるからか?」
蝋燭の弱い光に鈍く浮かぶ箱をみあげたマイクが口元を覆う。
「はん。あの、黒く汚れたやつが浴槽?衛生的に浴槽失格でしょ」
ウィルが左の腿につけた小型の銃に手をのばし、右手の大型の銃とあわせてむけ、そこを早くおりてこい、と執事に命じる。
「・・・ああ、きみたちはまだわかってないらしいな。さっきあんなにみせてあげたっていうのに。 ―― いいか?あの女たちは自分たちでここにくることを選んだ」
「てめえが仕組んだんだろ」
ジャンの怒れる声に、それはちがう、と骨ばった指をたてた。
「たしかに、ここに来やすいようにしてはやったが、 ―― わたしは誰一人として無理やりここに連れてきてはいない。みな、きみたちが言うような『生贄』などではなく、『王』と一体となるために、喜んでその身を横たえた」
「嘘つくなよ!」
ザックの声が響く。