№56 ― 中身だけを
№56
両側にずっと続いていた柱は、周りをかこむように配置され、乾いた地面には、煙といっしょに真ん中をすりぬけたあの石の板よりもさらに大きな石の板が埋まり、そのむこうには、細く長い急な階段がみえた。階段の上は広い場所になっているらしく、蝋燭の火がそこをぼんやりを浮かび上がらせている。
「あれって、・・・まさか、・・・」
階段の一番上には四角い黒いものが置かれているのがみえた。
「ジャスティンが言ってた『棺』なのか?おい、ジェニファーはどこだ?」
マイクがしかめた顔をクロードにむける。
いまだにケンに首をおさえられた悪鬼が、にいっと耳まである口をむきだした。
「あの子は無事さ。なにしろ鐘の音がずっとしなかったからな。 ―― では、おれの『役目』もここまでだ。あんたらといると体がしびれてどうしようもないし、ここから逃げんのが精いっぱいになりそうだ」
「待て。最後にひとつ」
ルイが手をあげる。
「 ―― さっきおれたちがみた、死んだノース卿は、その、《月の王》に殺されたってことなのか? 裏切ったのがばれて?」
「おいおい、あんたらも飲みこみわりいな。言っただろ?殺されたとかじゃねえんだって。 ありゃハロルドが自分に捧げようとしたジェニの代わりに精霊に《絞られた》だけだって。 身体の血とかを、『絞って』あったろ?精霊が閉じ込められたのは《人間の精気を吸う儀式》をやりすぎたからって教えてやったじゃねえか。あいつはただ人間を『絞って』吸い取る。だから、儀式で吸い取ったあとの人間の体をバーノルドの森に捨てるんだ。 ―― 中身だけ必要なんだよ」
みんなの頭には、科学捜査部のジョニーが発した『空のボトル』という言葉がいやでも浮かんだ。




