頭が大事なら
おい、といままで黙って肩をくんでいたケンが、気味の悪いクロードの顔をのぞきこんだ。
「 ―― その、ジェニファーに、最後くっついてた男のこと、知ってるか?」
「え?ああ、いや、知らないっ、いででで!やめろ!おまえ!本当に人間か?」
首を締め上げられたその顔は完全に悪鬼になっている。
最後まで整っていた濃い茶色の髪は、汚くほつれた白髪になった。
「ありゃおれじゃねえよ。あの男を轢いたのは。 でも、あいつたしか『光』に守られてたってはなしだぜ。だから助かっただろ? ―― あんだけはねとばされたのに、っいたい!」
首を抱え込むように絞めた男は声をひそめてささやく。
「 ドーンズの棚を倒したのもお前らだろ? 」
「あ?ま、まあな。あそこのオーナーもほんとは悪鬼だからな。店を使いやすかったっていう、っぐえ、やめろ!」
「理由なんかきいてねえ。そのことを、あの銃を持ったさっきの男に伝えたら、即、おまえは頭をなくすぜ。 ―― しられたくなきゃ、いいかげんこの迷路のお遊びも終わりにしろよ」
「わかった!わかったよ!」
みんなの耳が気圧の変化をうけたような痛さを感じたとき、扉がひらいたのと同じ唐突さで景色が変わった。