№31 ― 儀式を知っている人間に
ながいはなし、まだつづきます・・・
№31
ジョニーの断言に曲げた首をたててジャンがとまどう。
「――― ちょ、ちょっとまってくれよ。・・・・だって、『生贄』って・・・」
ジョニーはパチンと指を鳴らす。
「さて、ここで思い出してほしいのは、サラの恋人の証言だ」
――― わたしがいいなって言ったのは、バーノルドの殺人事件よ
「彼女は『わたしもえらばれたい』とも口にした。あの事件の被害者にあこがれていたことがわかるね。彼女はバーノルドの被害者の頭部が、《どのような状態》で見つかるのかを知っていたわけで、事件とふかくかかわっていたことがわかる」
「彼女は被害者だ!」
思わず叫んだのはザックだった。
「ザック・・、落ち着け」
「だってさ、なんかサラがまるで、・・・」
ニコルに肩をたたかれ、どうにか口をとじる。
ジョニーがいままでの楽しそうな表情をなくし、足元をみつめながら指をいっぽん立てた。
「そう。 ―― これは、たいへん嫌な話しだが、ぼくはこれしかないと思ってるんだ。・・・そもそも彼女の指紋がついた譜面というのは、どうやってできたんだ?あれが本当にノース卿のコレクションだとしたら、サラはノース卿の城の中に入って、その譜面に触れたんだろうということがわかるよね。では、どんな時に?音楽好きの彼女をうまいこと誘ってコレクションを自慢してみせた?いや、あの録音を思い出してほしい。 ―― 彼女は譜面のメロディーで絶滅した古代語を歌っている。言い伝えにあるように、彼女はその『歌詞』を口伝されたはずだ。儀式を《知っている》人間にね。 譜面を持って森で『呪文』の練習をしていた彼女は、ノース卿の『教会』の信徒だったんだろう」