端役から主役へ
「・・・そう、ジェニファーが城の教会にきたところから変わっていったのさ。 それまで儀式の女を用意するのは、《道化》の役目だった。やつが目をつけた女に『子鬼』をさしむけていろんな《細工》して、おれたち《人間役》もPCをつかったり、女と直に交信したりして、じっくり信用させながら、《女たちの願い》を利用して城に連れ込み、ハロルドに世話をさせる。 『花嫁』になる女なんだから、自分がいかにすばらしい《大役》にえらばれたのかを理解させて、いいものをたべさせて体から毒をぬいて、最高のコンディションにもっていくわけさ。そうして精霊の《花嫁》となる」
ちょっと待てよ、とジャンが手をふった。
「『間抜けな警官』の話じゃ、ジェニファーはノース卿の花嫁にされそうだったってことだけど」
だーかーらー、とクロードが赤い目玉をまわした。
「ハロルドはおれたちと同族になりたかったのさ。 ―― でもヤツはどう転んだって《神官》さ。おれたちと同じように、《月の王》のお楽しみのために《つかわれてる》端役。 ところがさ、あのジェニファーが自分から城の教会に来ちゃったとこから、勘違いしはじめちまったんだな。自分が《月の王》になってもいいんじゃねえかって。 わかるか?じぶんが端役だったこの《催し物》で、いきなり主役になれるんじゃねえかって思っちまったわけ」
指をむけられたジャンは嫌そうな顔をする。
「 《神官》が《道化》を うらぎった瞬間さ。・・・まあ、ほんらいジェニは選ばれた女じゃなかった。だけど城の教会にやってきて、彼女のお友達を湖に沈めるっていう楽しい催し物が決定された。 ―― ありゃ、『子鬼』と、おれみたいに人間の姿で教会にいる『悪鬼』がとびついて、さっさとやっちまったわけさ。 城にいる神官、道化、王は知らない間に。 それをおしゃべりな『子鬼』は神官のハロルドにだけ言っちまった。 ―― で、それを残りの二人に言うなってことになったのさ」
「それって、『精霊』と『学者悪鬼』に内緒ってことか?可能なのか?」
ジャンの言葉に咳のような笑い声がかえる。