どっちが上手(うわて)
「 ―― あれが精霊を閉じ込めた、魔女の『封』だ。 それを人間のゴードンに、《発掘》っていうかたちでとりはずさせたわけだけど、精霊も学者も、それぞれ『自分が封を解いた』と思ってる。 精霊は、『学者だった悪鬼をうまいこと操って自分を解放させた』と思ってるし、学者は『人間たちを操って魔女の封印を解き精霊を解放してやった』と思ってる。 お互いに相手より上手だと思ってここまでやってきたわけだ。 ―― でも、あいつらまとめてもう終わりだよ。こんなふうに人間に入ってこられるなんて、『精霊』の・・・『月の王』は、もう人間の《気》を吸収できないんだ。魔女の呪いのせいだろ」
「《気》を吸収?」
「《月の王》は、人間から吸い取った《精気》で長生きしてんだ。あの『精霊』が『魔女』に閉じ込められた原因ってのは、大昔に《人間から精気を奪う儀式》を、やりすぎたからさ。 だから、《道化》が《月の王》のために、同じ場所で同じように《儀式》を行った結果っていうのが、人間のいう《バーノルドの森事件》ってわけだ。 ―― でもよ、《人間から精気を奪う儀式》ってのは、大昔この辺りにいた人間とあの精霊との《取引》だから、精霊だけが悪かったとおれぁ思わねえけどさ。・・・人間にいわせりゃその取引が《悪霊》のすることなんだとよ。まあ、やつも調子にのって、結局それで、魔女に封じ込められることになっちまったんだけどな」
白く巨大な柱の空間を、顔が悪鬼とクロード半分ずつの男と肩を組んだケンを先頭にしてすすむ。
「おまえの言い方だと、人間のほうが悪くきこえるな」
ジャンの言葉にクロードは笑った。
「そりゃしかたねえさ。儀式に必要なのは『処女』とか、『清らかな魂』、とか人間の世界でよく聞くけどさ、そういのは、人間のほうが勝手にそういう限定つきにするんだ」