でっかい石版
扉をぬけて出た空間にも同じような柱が並んでいた。
「 ―― で、『精霊』に指図された《道化》は、とにかく人間をよびよせる必要ができた。ハロルドは元々神官の家系だったし、その中でも極端におれたちに近づきたがってた人間だから、すぐに交信できただろうな。 ああ、あと『精霊』の別名だった《月の王》なんてのが登場する芝居を、ローランドってやつにかかせたりして。 ―― でもありゃ《道化》の趣味だな」
「ちょっと待てよ。たしか魔女は、名簿を盗んだのは《月の王》って名乗る学者の悪鬼だっていってたぜ。その《道化》ってのは《月の王》とは別なのか?」
ジャンを振り返ったクロードはうなずいた。
「 だから言ってるだろ?《月の王》ってのは、閉じ込められてた『精霊』の名前。その『精霊』を自由にしてやった学者の『悪鬼』が、《道化》って名乗ってたんだよ。 いいかい、実はあの二人ちょっと面倒な関係なんだ。 ―― まず、魔女に閉じ込められた『精霊』に『学者』が《声》をかける。千何百年も眠っていたヤツはそれで目を覚ました。目をさました『精霊』は、自分の《声》を拾える人間を探した。それが、 」
「マデリンだ」
怒りをふくんだジャンの声に悪鬼はわらう。
「そう。いつの時代にもどこにでも、《ああいう人間》っていうのは見つかるもんさ。 おっと、おれを睨んでもしかたないだろ。 ・・・とにかく『精霊』は、そういう相手を見つけることはできる。この時期ゴードンもみつけた。 でも、そこまでしかできない。 『魔女』に閉じ込められてる『精霊』には、とても人間に声を届ける力なんてありゃしない。 だから、『学者』が代わりにマデリンに《声》をおくって指示を出した。 そんで、ゴードンが掘り当てた遺跡なんてのは、けっきょくおれたちの古巣だから、そこに残ってた『気』を吸収して精霊は元気になっていったわけ。 『学者』はバカだから気づかなかったみたいだけどな。 ―― で、この《中央劇場》を掘ったとき埋まってた、でっかい『石版』、知ってるか?」
ジャンが顔をあげ、そういえばジョニーがなんか言ってたな、と頭をかく。