古い銃
「おーい。みんなどこにいんだよ?」
暗がりからひびいたケンの声に仲間が顔をみ合わせて微笑み、柱の影から二人の人物があらわれたとき、クロードだった悪鬼が長い悲鳴をあげながら、逃げだした。
一直線に、大きな扉へむかって。
「 ―― んで? こいつ、だれだ?」
走り出したクロードを考えも無しに追いかけてすぐに引き倒したケンが、転がした体の背中に片膝をつき、のんきに聞く。
「悪鬼の仲間らしいよ。ミスター・クロードって名前で、会計士の仕事もしてるみたいだけど」
ウィルが教える。
おさえこまれた、半分クロードの顔が、首をありえない角度に曲げてケンをにらんだ。
「 おまえ! 人間のくせになんでおれを掴めたんだ? 体がしびれる!痛い!ちくしょう! また魔女か!人間に捕まっちまうなんてありえねえ! もとはといえばあいつらが悪いんだ!いっつもおれらを見下して、鬼族はなにもできねえみたいなこと言いやがって! っぎゃあ!なんだ、そいつ! もっとむこうへ行け!! やめろ!来るな! 」
むこうへいけと言われたバートは悪鬼のそばに立つと、上着から何かを取り出した。
「・・・先に言っておく。おれはな、てめえらと『取引』しようなんて思ってねえ。あの扉が開こうがどうだろうが関係なく、おまえを今ここで撃つ」
かがんだ男の手の先にある、いやに古い型の銃の筒先が、ごりり、と音がしそうなほど、クロードの額に押し付けられていた。
「うっそだ!こんな銃、もう使えないはずだ!あの《魔法使いの鍛冶屋》だって死んだはずだし、弾だって生産終了だろう?」
「すごい銃だね。それ、どうしたの?」
骨董好きなルイが、たしかに古そうだけどまだ使えそうだね、と物欲しそうに目をこらす。
「あ、それ・・・」
うちの親父のコレクションだ、とウィルが言ったとき、表情も変えない男が、がちり、と撃鉄をあげた。