《取引》は しない
300台になってしまいましたが、ようやく、終わります!
あと少しおつきあいください。。。。
「 ―― いいか、ハロルドは『神官』だけど、人間だ。 あいつは元々、おれたちに親近感をもって育った。まあ、それが強すぎて、家族みんなをなくすことになったけど、そりゃまたべつの話しにしようぜ。 ―― おいおい、ほんとにこの『催し物』の実態がわかってねえってのか?」
さきほどまでの上流階級的なしゃべり方はなくなり、その口元といっしょに本来の姿があらわれた口調で、困惑気味の人間の男たちを見まわした。
ずっといらついていたザックが、こらえきれないように叫ぶ。
「うるせえ! おれたちはとにかくジェニファーを助けに来たんだ!早くあの扉をあ、ぐ」
ザックの口はニコルにふさがれ、前にジャンが出た。
「 ―― おれたちは、おまえらと《取引》はしない」
顔の上半分はまだクロードのままのそれが、とがった歯のすき間から、息と唾をとばすように笑い、指を鳴らした。
「 残念!! あとちょっとだったのに。 だめだねえ。若者の意見も尊重してやれよ。 じゃあ、あの扉はどうすんだよ?いっくらおまえらが《魔女の煙》に導かれようが、《光》に守られようが、あの扉を開くのは無理ってもんだぜ。ああ!でも、 ―― ひとつだけ、方法があるな」
そこで、まだ人間の眼だったものが、ぐるりとまわり、黄ばんだ白目に血がにじんだような赤い目玉が現れ、ウィルを見つめた。
「 ―― サウス一族の《首》でも持って帰ったら、おれぁ『子鬼』どもの中で英雄扱いだろうなあ。なにしろあいつらときたら、どこにでも入り込んで『のぞきみ』するのが趣味だから、どんな扉だって壁だって、あいつらに意味はねえのさ。 そうだ、《首》を《腕》にまけてやってもいいぜ。 ああ、でもおまえらは、おれたちとは《取引》しねえんだったな。 残念だなあ。 ―― じゃあどうする?あのでかい扉を・・・ 」
言葉のとぎれたクロードの眼が、むかいあった男たちからそれ、ずっと奥の柱のほうにすえられたまま、動かなくなった。
ついで、とがった歯がかちかちと音をだすほど小刻みに震えだし、視線はうごかさずに、じりじりと下がり始める。