これだから人間は
「誰が、誰を裏切ったって?」
ジャンの問いが聞こえないように、男はいらだったように扉を何度も指さしながら続けた。
「だいたい、あんな学者くずれの悪鬼なんて、ほんとうならわたしたちの力でとっくのとうに消してやったのに、『名簿』を盗まれた魔女たちが自分たちのマヌケさを知られたくないから、こっちに知らせてこなかった。 だからうまいこと逃げまわって、『神官』だったハロルドのところにもぐりこんで、お膳立てをはじめちまった。 人間を動かすことができなきゃ《あいつ》だってこの世に出てくることはなかったんだ。 ―― あんたら人間だって悪いんだぞ?こんな場所に人間の《劇場》なんて、いっちばん作っちゃいけないものを作って、そのうえ、近頃の人間どもはおれたちの怖さをすっかり忘れちまって、ほんとうの《光》をみた者なんて、ほとんどいないってはなしじゃないか」
そう言っていきなり指をむけられたウィルがなにも返せないのをじっとみつめながら、「・・・まさか・・」とほかの男たちを見まわした。
「・・・・・あんたたち、何もわかってないくせに、ここまで来たっていうのかい?これの《主催者》を、あのハロルドだと思ったまま? だって、あの男は死んだだろう?せっかくわかりやすいように《返して》やったってのに、・・・まったく、これだから、人間は・・」
自分の言葉がおかしかったかのように、男がうつむくように笑い出した。
笑い声がしだいに大きく下品になり、横に伸びた口がそのまま耳元までさけてゆき、赤い歯茎と、人とは異なる、とがった黄色い歯がのぞいた。
「 いいか?ハロルドを《絞った》のは、おれたちじゃないさ。 カラカラだったろう? ―― あの、森で見つかった女たちの頭と同じように 」
警備官たちが顔をみあわせる。
申し訳ありません。200越えてしまします。が、あとちょっとです!