証拠は?
またしても机を叩いたシェパードが、他の三人の注目を集め、満足したように「いいか?」と両手をひろげた。
「―― 今回の件は、《ノース卿の教会に紛れ込んだ》盗聴器が、おまえたち保安官のところに行っただけだ。わかりやすく言いかえると、ノース卿の城にもぐりこもうとした窃盗犯がまぎれこませてあった置物が、まちがってそっちにいったってことだ」
断言に、ウィルがあきれたように大きく息をつき、レオンがそれは違う、と反論した。
「ノース卿の城にもぐりこむのに、どうして彼らの教会に盗聴器を紛れ込ませなきゃならないんだ?だいたい、あの置物は、彼らが《作った》といって持ってきたものだ」
「勘違いしたんだ」
シェパードはまたしても言い切り、レオンはいささか困ったように眉をさげ、ものわかりの悪い子どもに言い聞かすよう言葉をくぎった。
「いいや、あの盗聴器は、ノース卿の教会の人間たちが、おれたち保安官の動きを、知る目的で、置いたものだ」
「だから!そんな証拠がどこにある? あんな安物の盗聴器どこででも手にはいるだろう」
シェパードは、保安官と警備官たちが、今回ノース卿の城を包囲するまでに至った経緯をまとめた報告書をテーブルに投げ捨てた。
だからぁ、とウィルがまた足をくみかえる。
「その『証拠』をさがすためにあの場所を押さえようとしたのに、わけのわからない指示でやめになったんじゃないか」
投げやりに片手をふる。