この『役』がお気に入り
その、どこか優越感をにじませた言葉にザックが二コルの横から飛び出そうとしたのを、ウィルが長い片腕でとめ、ちょっと聞きたいんだけど、といつものすました調子で前髪をはらった。
「ジェニファーをさらったのは、ノース卿なんだろ?」
「そうだよ」
「ほかのバーノルドの犠牲者たちも、さらっていたのは彼ってことだよね?」
「ノーコメント」
「あのさ、彼はここで《きみたちといっしょに》おかしな儀式をしていた。それをみて『きみたち』や『子鬼』たちは喜んでいた。 ―― なのに、ここにきていきなり、さらったジェニファーの居所をぼくたちに教えて、儀式の《主催者》をさしだして、さっさとここからいなくなろうとしてるわけ?」
「もう、終わりだからさ」
ジャンがウィルの横に立った。
「その『儀式の主催者』であるノース卿は、さっきおかしな死体になって発見されてる。そんなの知らないとか言わないよなあ?」
その言葉にクロードは笑った。
「なんだい?もしかしてきみたち、わたしを『逮捕』しようなんて思ってるのかい?まあ、たしかに人間の世界でいう《関係ない》ってことにはならないと思うけれど・・・、でも、今回の出来事の大半には、わたしたちは乗り気じゃなかったってことを伝えておかなければね。 ―― だから、あの『神官』が『道化』を裏切った時点で、みんな終わったなって、悟って、すぐに元の場所に戻ったのさ。 わたしはちょっとこの役が気に入ってたから、こうして最後まで出てきちゃったけど」