どうやって来たのかいってみろ
「ほんとうなんだよ・・・全部・・・」
力のない言葉は自分でも説得力がないとわかっている。
ラジオから気まぐれのように流れでた『たすけて』という彼女の声が耳からはなれない。
何もできなかった自分にたいする失望が、からだの力を奪い、その場にしゃがみこみ頭をかかえる。
「ほんとうなんだ・・・さっきも言ったけど、おれは撃ってない。 ノース卿に会う前に、銃はなくなってたから、ジェニファーを取り戻すこともできなかったんだ。 ―― でも、いまはそんなことどうでもいい。ジェニファーを早く見つけなくちゃ。 彼女だけここにいないなんておかしいだろ、まだ、《あそこ》にいるなら、早く、すぐみつけないと、 もしまたあの『鐘』に狙われでもしたら、もしかしたら・・・」
「おちつけ、ジャスティン。とにかくここはこの遺跡に中でいちばん広い部屋だ。どこかに、お前がさっきまで行ってたっていう別の部屋がまだあるのかもしれない。 ここに来るまでも、通路はいくつも分かれてた。 あのなかに、その部屋へ続く通路があるのかもしれないしな」
隣にしゃがんだマイクが力強く背を叩く。
同業の男のなぐさめに礼を口にしようとしたとき、思ってもいない言葉が口をついた。
「おまえら、―― ここまで、どうやって来たのかいってみろよ」
「なんだって?」
いぶかしげに顔をのぞきこむマイクよりも、ジャスティン自身の方が驚いていた。
そんなこと、いうつもりなんてまったくないのに、口が勝手に動いたのだ。
「いや、あれ? なんか、口が勝手に・・・」
あわてて自分の口元をおさえれば、近くで見合った男の顔が、見る間に怒りをあらわし、憎々しげにこう言った。
「・・・ジャスティン、おまえ、・・あの、煙草を吸ったんだな?」
襟をつかまれて立ち上がる。
「な、なんだよ、マイク? 吸ったよ。あれは、なんだか勝手にポケットにはいってて、でも、それのおかげで閉じ込められた部屋をでられたんだ」
「あの魔女を信じたのか?」
「信じるも何も、あの女は魔女じゃなくて、ジャンの知り合いで」
「あいつは魔女だ!魔女なんだよ!」
「マ、マイク?どうしたんだ?」