『撃たれたノース卿』
「でも、ジェニファーはここにいない」
「え?だってあそこに」
「これ、お前のだよな?」
唐突に、ジャンが布に包まれた銃を差し出す。
「お前のそばに落ちてた。弾も一発つかってる」
「うそだ! だって、銃はなくなって・・・」
どうにか立ち上がり、よろめきながら横たわった黒い影にたどりつく。
「――― そんな・・・」
ライトで照らすまでもなく、そこに横たわっているのが男で、そのうえ信じられないことに、ノース卿だというのを確認する。
「胸に一発で即死だ」
これは預かっておく、と冷たい声のジャンが銃をしまう。
「うそだ・・・。だって、鐘が落ちてきて・・」
混乱する頭をたたきながら黒いマントを着たままの遺体を見下ろす。
マントの下にも黒い色の上下を着た男のシャツは、たしかに左胸に穴があき、よく見れば遺体の下には血だまりがある。
死んだ人間はそれなりに見ているのに、吐き気がしてきた。
大丈夫か、と隣にマイクが立つ。
大丈夫じゃない、と首をふる。
「 おれが・・・ここで体験したこととは、違う現実がここにある・・・ 」
足跡もお前のしかないというルイの穏やかな指摘に、わかってる、といらだった声をあげてしまう。
「 ―― でも、撃ったのはおれじゃない!ジェニファーでもない・・・」
「そのジェニファーは?どこに行っちゃったわけ?」
ウィルがつまらなさそうにきいてくるが、ジャスティンにはこたえられない。
落ちてきた鐘がどんなものかを説明し、中に大きな刃物が取り付けられていたことも話したが、きっと誰も信じていないだろうと思う。
反対の立場だとしたらそんな話、絶対に信じないだろうから。