ひとつになる
石の上、ジェニファーの隣に横になったノース卿は上からせまる鐘をみながら笑っている。
ジャスティンの頭の血管が切れそうだった。
「何を笑ってんだ? とにかく彼女だけでもどかすんだ!」
「それは、できないな」
「なに?」
思いのほか冷静な声がもどり、こちらもいくらか冷静さをとりもどす。
「 ―― できないわけないだろう。あんたが彼女の身体をむこうへ押しやればすむことだ。自殺したいなら勝手にやってくれ! 彼女は道連れにせずにな」
ここまで来るともう本音しかでない。後で問題になろうとも、いまはジェニファーだけ助かってくれればいいと思う。
それはできない、とまたノース卿が言った。
「―― さっきも言った通り、彼女はわたくしの『花嫁』になるのだ。それがどういうことかわからないからきみは騒いでいるのだろう。 ―― いいかね、彼女とわたくしは、『一つ』になるのだよ。まだ、彼女の炎さえわたしに移っていないのだから、邪魔されては困る。 炎にきよめられたわたくしたちは、この月の宮殿で今の王のように ―― 」
リリン ゴオオオオン
リリン ゴオオ オオン
みあげた鐘の中の刃物がぎらりと蝋燭のあかりに浮かび、研がれて手入れされているのが確認できる距離まできていた。
「 つまんないけど おわりだね 」
「っ!?うっごいた!」
またしても耳にした子どものような声に寒気がしたとたん、力を入れていた足がいきなり前に出た。