地下にむけて
「また天井か?」
今度は手を伸ばせば届く高さで、はじめから人が通れるほどの黒い穴がある。
ジャンがむけた明かりに、穴の中で金属製の梯子が照らされた。
すぐにライトを口にくわえて穴にとびついた男が、「巻き上げ式だな」と、鎖でできた梯子をおろし、一番にのぼってきたザックに言う。
「ほらな。こうやってちゃんと人間が通るための道具も整ってて、おれたちのじゃない靴跡も残ってる。 『迷子』じゃないから安心しろ」
ザックはうなずいて、細くゆれる煙を指でつついた。
「それにしても・・・まわりくどいなあ」
ルイが息をついたのは、のぼった天井の中にあった細い通路が、まだ続いていたからだが、それは先ほどとは違い、ゆったりとうねるようにまがりながら、下ってゆく道だった。
「くだってるね。 ―― 地下にむけて」
ウィルの言葉が合図のように手にしたライトを制服の肩にさし、皆がいっせいに走り出す。
それぞれが銃をひきぬき準備する。
「おれとニコルの間にいろよ」
振り返りもせずにウィルがザックに命じた。
だいじょぶさ、と後ろからは二コルのおだやかな声。
ザックはただ、はい、と返事をした。