№51 ― 迷子に近い
№51
警備官たちがはいりこんだ天井裏には、細長く続く空間があった。
《子鬼》とそれを捕まえる白い煙の後を追う大柄な男たちが中腰のまま一列で移動できるほどの余裕のある空間だが、何度も折り曲がり、ずっと続いている。
ようやくゆきどまったと思ったら、下へとのびる階段にたどり着いた。
見取り図を手にしていたルイが方位磁石を手にしたジャンと確認しあい、現地が『非常階段』脇の空間だな、と横の壁を叩いてみせる。
下へゆく狭く急な階段は、材木でつくられた簡単な梯子だったが、男たちがまとまっておりても、きしみもしなかった。
下へ着いても通路が続き、今度のそれはまっすぐにのびていたが、ガーバディ警備会社が開発した小型の強力ライトで照らしても、先の闇がどこまで続くのかは見えない。
なのに、進んでみると意外なほど早くに曲がることになり、ザックは思わず心細い声をだしてしまった。
「・・・なんかさあ・・、方向感覚おかしくならねえ?」
まるで、迷路のように。
「安心しろ。磁石はきちんと仕事をしてるし、この不思議な『煙』も続いてる。 おれたちは迷子じゃない」
安心させようとした二コルの言葉に、そうかなあ、とウィルの声がかぶる。
「この先がどうなってるかわかってないって時点で、迷子に近いものがあるよね」
しゃべりながら進むうちにも、またしても前方に壁が現れ、右に曲がることになる。
現在位置をルイが見取り図で指さし、ジャンとうなずく。そんなことを数度くりかえし、また次の階段にいきあたる。
先頭をゆくジャンの戸惑った声が響いた。
「なんだ?いきなり広いな」
背をのばしても平気な高さだった。
ザックとウィルも、その半円の空間につくと、「ここって、あの倉庫部屋の、《半円》の舞台のあたりかな」とルイが足元をみる。
なんだよ、とザックが不満げに腕をくんだ。
「じゃあ、もしかして直にこことつながってたとか?おれたちすげえ遠回りしたのかも」
それはないだろと言い切ったジャンが、みんなにライトであの『煙』をさがすよう指示する。
ニコルのライトがむこうの天井にのびるそれをみつけた。