参加を表明
「 ―― なに馬鹿なこと言ってんだ?まさか・・・これからあの《儀式》を、・・・生贄ごっこをするとかじゃないよな? おい、待てよ。なんだよ。《バーノルド事件》は、三年ごとなんだろ?このまえエミリー・フィンチっていう新しい犠牲者がでたばっかりなんだぞ?」
「『ごっこ』なんでしょう?それに、なにか問題があると感じたら、あなたが『魔術ごっこ』だという《儀式》をとめればいい。 ―― 先に言っておきましょう。ここでは誰も、あなたが持っていたような無粋な銃器などもちあわせていないし、他に凶器になりそうな刃物だってない」
「信じられないね。おれの銃は誰かに持ち去られてるし、だいいちバーノルドの被害者はみんな首を刃物で切られてるんだ」
ああ、とノース卿は微笑んだ。
「 アレを『刃物』とよぶのならば、そうでしょう。 だが、わたくしたちは誰も、それに触れることはない」
「意味がわからないぜ。さあ、彼女をそこに置いておとなしくおれと外に出てくれ。 これ以上罪を重ねたってなんにもいいことなんかありゃしない」
銃もない状態で口にしても通じないことはわかっているが、言わずにいられない。
なにしろきっとこの奥には、この男を『司祭』とあがめる何十人もの人間が集まっているだろうからここでひきとめたい。
だが、思った通り、相手は白い歯をこぼして笑った。
「おもしろいことをおっしゃる。『罪』?それはなんでしょうかな?ああ、人間の存在自体のおはなしかな?」
マントをひるがえし、向きを変える。
「待て」というジャスティンの声がひどくむなしく響く。
ふりむきもしないノース卿の声がこたえた。
「ひきとめたいのならば力ずくで止めればいい。わたくしもあなたと同じで何の武器も手にしていなのだから」
できればジェニファーにけがをさせたくなかったが、気にしている場合ではなくなった。
姑息な手だがとりあえずあいての膝裏をねらうことにしたジャスティンは、いっきに駆け出し、勢いで危うく《それ》にぶつかりそうになる。
「っうっそだろ」ぱん、と手をついて衝突をまぬがれたのは、石の壁で、反対側をむけば、ノース卿の背がそちらの闇に溶けてゆくところだった。
「 ま、待て! おれも、おれも参加するから、まってくれ!」
叫び声に立ち止り、ゆっくりとこちらに顔をむけた男の微笑みが、蝋燭のあかりにぼんやりと浮かんだ。
「ようこそ。―― 歓迎いたします」
気味の悪い子どもの声ではなかったが、ぞわりとした。