『魔術ごっこ』
「わかっているのですよ。いくつもの『眼』があなたをみていたのだから。 ここにくる通路を進んでいて、あなたには『声』がきこえたはずだ」
――― ようこそ 月の内側へ
思い出したジャスティンの腕があわだつ。
「いや、・・ありゃ気のせいだ」
たしかにあの部屋の天井からはいった通路をたどっているとき、その気味の悪い子どものような声が聞こえた。
だが、気のせいだと必死に自分にいいきかせたのだ。
相手が笑いをうかべた。
「その『声』がきこえていきなり意識が遠くなったでしょう? そして気づくとこの石の空間にいた? そう、それこそが、あなたがここにくることを望んだ証拠です。 ―― ここには、半端な希望者はたどりつけない仕組みがあるのだから」
「は、ばっかばかしい。ジェニファーは望んでなんかいなかっただろ? ―― 彼女はこわがっていただけだ。あんたたちのおかしな《魔術ごっこ》に入れられて、いかにもな儀式をみせられたから」
自分の声がこわばっているのを感じたが、ジャスティンはどうにか一歩前に出た。
目を合わせた相手がふと馬鹿にしたように口をゆるめ、ごっこか、とつぶやく。
「 ―― では、あなたもその《魔術ごっこ》に参加すればいい」