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のぞんで ひとりで


 現れ方が唐突すぎ、ジャスティンはまったく動くこともできなかった。


 気配も音もなく闇から現れた男は、手にしたろうそくの火で不気味に浮かび上がる。

 黒い布のマントかぶり、街中で見たときよりもいっそう禍々しく、そして、若く見えた。


「ノース卿、あんた、やっぱり、」

「『やっぱり』?わたくしが彼女を誘拐したと?それは違います。彼女はみずから望んでここにきた。そして、―― もちろん、ほかの女たちも」


「やっぱりあんたがバーノルド事件の犯人なのか!?」


 先ほどジェニファーに『本物の人間をつかうわけない』と否定され、一瞬だけ安心したが、この男を目の前にすれば事実はどちらなのかは歴然としている。



 ノース卿は気を失った女を、軽々と空いている片腕で抱え上げてわらった。


「バーノルドの何ですって?『犯人』?ああ、そんな《よびかた》はまったくの見当違いだ。 バーノルドの森に捧げられた彼女たちは、みずから《ああいうかたちになること》をのぞんだのだから」


「そんな戯言ざれごとは警察できくさ。 あんたは自分が犯人だって認めるんだな」

 

 念を押すような言葉がまるで聞こえないような口調で聞き返された。


「あなたは?なぜ一人でここに?」


「っは?おれはジェニファーを助けに、」


「『助けに』? ―― あなたは、わたくしからヒントをもらっていた。『警察官』ならば、そのヒントをほかと共有してお得意の団体でくればいい。 なのに、あなたは、『一人で』ここにきた。それは、あなたが《のぞんだ》からでしょう?」


「い、いそいでたんだ!彼女の声が必死だったから」


「そうでしょうか? ここにくるまでに引き返して応援を呼ぶことも考えられたはずでしょう?だが、けっきょくは一人で来た。 『いそいでいた』は言い訳だ。あなたはひとりで彼女を助けて、いっしょに仕事をする《気に入らない人たちを見返し》たかった。 組んでいる警察官か、それとも、あなたがいつも出し抜かれてると思っている『警備官』か」


「っ!?」


 ノース卿は右腕をのばし、燭台を近づけてジャスティンの顔をのぞきこんだ。



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