魔女の名簿
「ねえ、あれって・・」
ザックがむけたライトの先で、さきほど女が吐いた大量の白い煙が、うすまることもなく、ゆっくりとジャンのいる天井へとのびてゆく。
魔女がわらう。
「ご存じかしら? 子鬼たちは『楽しい』ことが大好きですの。 ―― たとえば、あなたたちの言う『鬼ごっこ』や『かくれんぼ』なんて、あなたたちよりはるかに《真剣》に取り組んでますわ」
意味ありげにウィルにむけて微笑むと、床で伸びている気味の悪いものへと歩みより、吸いためた煙草のけむを吹きかけた。
またしても、ぎゃっ、と悲鳴をあげたそれが飛び起きて、ジャンのいる棚をのぼりはじめる。
棚のてっぺんで腹ばいになり、下でのなりゆきをながめていたジャンは、なるほど、と言ってのぼってくる《黒い物》のため、身をわきへどけた。
「 この『子鬼』のあとを、おれたちが追いかけていけばいいってわけか? おい、あんたの正体はおいておくとして、この事件に、あんた自身は関わってるのか?」
アッツボーはゆっくりとこたえた。
「 ・・・すべてのきっかけは・・・、身の程をわきまえない者に、わたくしが『名簿』を盗まれてしまったことから始まりますの」
「『名簿』を盗まれた!?それって、ローランドのこと言ってんの?」
アッツボーの『名簿』と言う言葉にザックがききかえす。
女は首をふった。
「いいえ。 ―― わたくしから『名簿』を盗んだのは、『月の王』と自ら名乗る者です。 そして、あのローランドと言う男が盗んだことにより、名簿はもう役目を終えましたわ」
「『役目』って・・、そうだ、ノース卿もそう言ってた」
マイクがはっとしたように女をみる。