勘
『勘』ねえ、と腕をくんだジャンが、まあバカにできねえけど、と頭をかく。
「とにかく、まじめな性格だったらしいからね。 ―― 仕事のストレスがたまってたせいだって、残された人たちは今でも思っている」
はなしをききに行った会計士仲間もみんな同情的で仲が悪かった仲間の話しはどこからも出なかった、としめくくった。
「なんだよ、じゃあやっぱり自殺か・・・」
ジャンのため息がみんなの気持ちを表していた。
それをみやったジョニーはまた箱に手をいれて、今度は紙の資料をとりだす。
「―― さて、次はいよいよ、サラ・クロフォードの、例の録音にいくよ」
保安官から回収した録音の声は、サラでまちがいないと確認されていた。
「そして、ローランドのあのパーティーで使われていた歌も、サラの歌声だった。あれは、ノアの方の事件での証拠品だったから、ルイにいわれなきゃ調べてみようなんて考えなかったよ」
感謝の視線をうけた男はうなずくと、そこで出てくる疑問を口にした。
「じゃあさ、そのサラのうたの録音を、ローランドがどうやって手にいいれたのかが、問題になるわけだね。それもノース卿から盗んだって?」
ところがこれになにかたくらむような笑顔をうかべ、ジョニーは端末機に画像をあげてみんなにみせた。
「先に、この『譜面』のことを話そう」