ワクナという魔女
女は男たちをひとわたり見渡すと、最後に棚の上のジャンに微笑みかけてから自己紹介をした。
「 ワクナ・アッツボーともうします。 どうやら『災い』がよけきれなかったみたいですわね」
マイクと目があうと、残念そうに首をふる。
「 ―― 気をつけろ。この女、ここでの出来事に関係してるかもしれない」
まっすぐに銃をむけてマイクは睨み返した。
どこかの民族衣装のような服と装飾品を身につけた女は、赤い口で吸いつけた煙を、ゆっくりと部屋の中へと吹いた。
とても煙草の煙とは思えない量の白いもやが、部屋に充満する。
口から煙をこぼしながら女は指にはさんだ煙草をふる。
「 その、『ここでの出来事』っていうのは、あの《神官》が干からびて放り出されたことかしら?」
ウィルが眉をあげて女をながめてから、銃をそちらへむけて言う。
「 何で知ってるのか、聞いたほうがいいのかな?それとも、《きみは何か》って聞いたほうがいいかな?」
銃口をむけられたままの女は困ったように肩をあげた。
「どちらでもかまいませんけど、どちらのこたえも、ひとことではまとめられませんし、あなたたちは、いそいでいらっしゃるんでしょう?」
「ひとことでいえば、この女は『魔女』だ」
マイクが代わりにこたえる。
『魔女』は銃を向けるマイクに微笑みかけた。
「 ―― その呼び名はあなた方がつけたものですわ。理解できない力をもつわたくしたちに」
「ノース卿と知り合いってことか?」
棚の上からのジャンの問いに、声をあげて笑った。