電灯のない部屋
ウィルが前髪をつまんで顔をしかめたとき、マイクが近づいてきた。
「これから科捜部がくる。ノース卿のほうはまかせて、とにかく先に例の三階の部屋に行ってみないか?」
ジャンがエミリーの恋人を説得した効果がすでに現場ではあらわれ、二コルが持っている鍵束を返すようにいう劇場関係者はいなかった。
「ノース卿があんな状態になっちまって、とにかく二人が心配だ」
先に歩きだし、張りつめた声をだすマイクをほぐすように、ウィルがいつものように反応する。
「まあ、それはぼくも賛成だね。ジャスティンがジェニファーといっしょにいたとしても、あのジェニファーが相手にしてくれるかわかんないし、いないよりはましか、ってぐらいだよ」
みんなが笑い、マイクもどうにか口元をゆるめた。
たどり着いた三階の五番目の部屋のノブをニコルがなんとなくひねれば、鍵を使うこともなく開く。
「窓がないのか」
つけた明かりで見えたのは、壁際に机が二個と大きな書棚がひとつ入れられた殺風景な部屋だった。
「見取り図には事務備品管理の部屋ってかいてあったな」
二コルが先にすすみ、奥の壁にあるドアをあけた。
「これが続き部屋か。 こっちには窓がある」
その窓からの明かりで電灯のスイッチを壁にさがすが、どこにもそれらしきものがみあたらない。
「なんで?うっそ。この部屋電灯がないじゃん」
天井にライトをむけるザックが信じられないというように言う。




