『余興』
『 王と踊りし女たち それぞれ役を終えたのち
月にて王の花嫁に 』
マントの男は腰をおり、深々と頭をたれた。
「『花嫁』だあ?ふざけたことぬかすな、『生贄』の間違いだろうが」
ルイが銃を構えたまま棚の間を走る。
ほかの三人も分かれてすすみ、舞台を囲むように、銃を構えた男たちがせまってゆく。
「さあ、マントをぬいで早く顔をみせるんだ。ハロルド・デ・ノース」
しっかりと狙いを定めたままルイが舞台に続く階段に足をかけるが、なぜかマントの男は身を折ったまま笑い声をあげた。
腹をたてたザックが一歩足をふみだしたとき、またしても明かりがおち、真っ暗になる。
『 道化のダンスはここまでに。
―― 余興にて、子ネズミのダンスをご覧あれ 』
人をばかにした声にあわててライトを舞台にむけるが、もうマントの男はいない。
そして、《観客》たちの笑い声と拍手が爆発的に部屋をみたした。
身をすくめ、ひるんだザックの背中に何かが当たり、ひどい声をあげてしまう。
「大丈夫か!?」
そう言ったニコルにも何かがあたってから、ばさりと音をたてて落ちる。
「本だ!」
みんながつけたライトの光の中に、こちらをめがけてとんでくるたくさんの分厚い本がうかんだ。