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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 後編  作者: ぽすしち
〈ひとり芝居〉 目もあてられない
148/236

『愛される女』 ― ドナ


 すべての銃口が自分にむけられているのをおもしろがるようなマントの男が、『次の章』とかざした右手を胸にもどし、ゆっくりと腰をおる。



『 さてさてつぎに選ばれしは《愛される女》 』



 声とともにこんどはルイの目の前に、看護師の制服をきたドナ・ホーンがあらわれた。

 顔に表情らしいものはなく、制服をいきなり脱ぎだし、下着姿になると甘い声でささやいた。


『やっていいのよ。ここで』


 腕を組んで表情もうごかさず彼女を見下ろしたままのルイに、姿の見えない《観客》たちからブーイングのような声と笑いがわいたが、それをかき消すように銃声がひびいた。



「 ―― 笑ってないででてこいよ。とにかく、お前らの態度が気に入らないね」


 引き金をひいたルイの言葉にひそひそとしたさざめきがひろがり、今度はなにかをしゃがんでみるドナが現れた。



『やだ、なに?それって人形でしょ?っわ!動くの?・・・わお、しゃべることもできるのね?すごいわ。どんな手品なの?・・・本物みたい・・・』


 手をのばしかけあわててひっこめる様子に、あたりから今までで一番おおきな笑い声があがる。

 

 そして舞台には、大きなベッドに裸で横たわるドナがあらわれた。

「やめろ」ニコルが鋭く言うのに、ベッドで態勢をかえるドナの荒い息遣いが重なる。


『―― ねえ、手品師さん、この匂いって、何かの葉っぱなんでしょ?幻覚作用をおこすのよね?だから、いっつも、途中から人じゃなくなっちゃうの。ほら、こうやって後ろからのとき、ちょっと振り返ったりすると、・・・ああ・・あなた、ほんとは人じゃないの?』


 ルイがマント男の足元を撃ったが、相手はぴくりとも動かず、口元はわらったままだった。


 

 とたんに、むこうの舞台に黒いドレスをきたドナがあらわれた。ぼうっとした顔を少しかたむけ、感情のこもらない声で話す。



『いいの。もういいわ。やっぱりあたしみたいな女は、こういう方があってるのよ。人とやるのも人じゃないのとやるのも同じだし・・・。姉さんに面倒な手紙はださなくっていいし、もう、どうでも・・・あの人さえ無事なら、・・・いいの・・・』


 こちらにむけた頬にひとすじ水が流れた。

 

 ルイの舌を打つ音が響く。


 それをまた笑う《観客》たち。



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