声と司祭
「知ってたわ。 『呪い』が実行されたのよ。だから、そのせいで、―― わたしにあの声がきこえるようになったんだから」
泣いてはいるが、その顔は怒っている。
女ってのはこういうところがわからない、と思いながらジャスティンはきく。
「『声』ってどんな? 電話がかかってくるとか?」
「声は声よ!どこにいてもどんなときも、勝手に頭の中に聞こえるのよ! ・・・そりゃたしかにあいつら死ねばいいって思ったわ!でも、そんなの実行してほしいなんて頼んだわけじゃないのよ、なのに、勝手にやっておいて、『きみの願いはすばらしかった』だなんてしゃべりかけてきて、もっと願えばいいって」
「誰かの不幸を?」
「そうよ!だから、それからは次々に願ったわ!少しでも気に入らないことや人物がいたらすぐにその声に頼んだわ、そしたら脅せるようなことまでわかるようになった。・・・家族の様子から家でなにをしていて、どんな隠し事があるのかまで。 ―― あんたたち警察官になら、本気で脅すための呪いをかければいいって『儀式』もおそわった」
だれに?ときくこちらの顔を彼女はにらんだ。
「だから!『司祭』よ!ノース卿よ! 彼はあの声をあやつれるし、人だって簡単に操るわ!そんなことも知らないでここにきたの?あんた、どうやってここから逃げるつもりなのよ? ねえ、 ―― わざと捕まったのよね?それでここにつれて来られたんでしょ?」
薄闇の中でもこちらにむけられた顔がひどく心細げにゆがむのがわかる。