つまり
「最初から、話してくれないか?―― きみが、置いて行かれたバーノルドの森でどんな体験をしたのか、から 」
つながった手をかるく振る。
頬をこすったジェニファーが口をあけ、まわりをながめてつぶやいた。
「・・・声が、しない・・」
「え?」
「すごい!声がしないわ。あの気持ち悪い声がきこえない! 今なら平気かも。 ねえ、わたしがあの日森に置いてかれてどんな気持ちだったかわかる?真っ暗で寒い中をさまよいながら思ったわ。《あいつら、ぜったいに殺してやる》って。 そしたら、そのときに明かりが見えたのよ。それをたどっていったら着いた」
「ノース卿の城に?」
「教会よ。ああ、お城の一部なんだっけ? くずれた壁の中にあるようなひどい建物だったけど、ランプをゆらして、まるでわたしのこと待ってくれてたみたいだった。毛布をかけてすぐに教会横の小屋にいれてくれて、わたしの話を聞いてくれて、かくまうって言ってくれたわ。 わたしは悪くないんだから」
安心したが、置いて行った《仲間》への怒りはおさまるどころか、激しくなった。
「 そうしたら、名前をきかれたの。そのずるい仲間の名前をここでいえば、神様がきっとかたきをとってくれるだろうって」
あなたが怒るのももっともだし、そいつらが痛い目にあうのも当然なんだから。
「ちょっと告げ口するのよ。そうすれば『あとは神様がやってくれる』っていうから、三人の名前を口にしたわ。 ―― わたしがしたのは、ここまでよ」
「・・・つまり?」
「だから、わたしのせいじゃないってことよ」
「本心から?」
「っ、なにが言いたいの?わたしはなにもしてないわ!」
「三人の行方がわからなくなってるのを知ってた?」
つながっていた手をジェニファーがふりはらう。