これも引用
「―― さて、このように、今までは『お別れの手紙』だったものが、今回のきみたちの『掘り当て』で、少し違う意味を持つ『手紙』になった。さあ、だれかわかる人?」
期待のこもった質問に、ジャンが、優等生のように答えた。
「―― 文は、とある芝居からの引用だっていうのがわかった」
正解というように手を打ったジョニーが、ここにいる男たちの間ですっかり有名になった芝居の題をつげる。
「『女王のダンス』からだよ。―― ぼくはね、てっきり、ドナとその恋人が一緒に観に行った芝居から、引用したのかと思ってた」
ところがドナは行ってないとルイがあとをひきとる。
「そう。ドナはじっとしてるのが苦手だったみたいだねえ。・・・そんな彼女が、どうしてあの長い芝居の、こんなセリフを知っていたのか?」
指をむけられたザックが戸惑いながら口にする。
「えっと、誰か、女王のダンスを観たやつに、教えてもらった・・とか」
「それだ。その誰かっていうのは、きっと彼女の『手品師さん』で、―― 彼はきっと、彼女が覚えるほど『女王のダンス』からいろいろと引用していたのじゃないかってね」
ジョニーは同じ姿勢のまま、箱から端末機を取り出し、次に行こうと、と口早に言った。