舞台に男
マイクがザックの肩をたたき、最後のルイが背後を確認しながらドアをくぐったとき、風圧を背に受ける勢いで扉がしまった。
「明かり・・・勝手についたぞ」
ニコルが銃をかまえ、ささやく。
しまったドアのノブをまわしたルイが首をふり、ザックにも銃を手にするように指で合図する。
「出入り口は?」
マイクの低い問いに、「ここだけだね」とルイが携帯を確認し、通じないことを報告する。
銃をかまえ、身をかがめた四人でゆっくりと移動しながら、四方に銃口をむけ様子をうかがう。
勝手についた明かりは奥の舞台を照らすものだった。
いくつもの棚が並ぶのをみまわし、あの陰に呪いを実行するボランティアが隠れてたらアウトだねぇ、とルイがのんきにささやく。
だが、何の気配もない。
「おい、おれたちはジェニファー・ハワードをさがしてここにきたんだ」
誰かいるのか、というニコルの声にこたえるように、舞台近くの棚から、黒い影がひとつあらわれた。
ザックの喉が鳴る。
ルイが半身でかばうように前に出た。
ゆっくりと舞台にのぼったのは、黒いマント姿の男だった。
頭も顔もマントのフードで隠されているが、笑いをにじませた口元だけがみてとれる。
そうしていきなり、その《芝居》が始まった。