バーノルド事件を憎む
早朝から押しかけた中央劇場で最初に捕まえたのは、このまえ会ったチケット販売部の責任者であるハドソンだった。
まだ正式な捜索許可がおりていなが、ここの地下に殺人と誘拐の嫌疑のかかったノース卿が隠れているはずで、どうにか中を捜索することはできないかと交渉してみた。
昨日もやってきた警備官たちが、椅子の倉庫になっている部屋をのぞいて帰った話しはハドソンもきいており、あなたたちはなにか勘違いされているんじゃありませんか、と笑ってかえされた。
だが、現時点で行方不明の少女がこの劇場の地下にいるかもしれないという話しをきくと、顔色を変えた。
ルイがすかさず言葉を継ぐ。
「あのバーノルド事件も、どうやらここの地下が殺害の現場だと考えられます」
「まさか!!」
「この建物の下に遺跡があったことはご存じでしたか?」
「それはもちろん。ですが、それは発掘し終えて埋められたのでしょう?」
「ところが、とてもそうは言いきれません。国土省にも文化省にも発掘の計画図が残っていないんですよ。遺跡があったこともうやむやになったまま、この建物が作られているんです」
「そんなばかな・・・」
なにも言い返せないハドソンに、ルイがさらに端末機をさしだす。
「これが行方不明のジェニファーです。亡くなったローランドがおかしなパーティーをしていたのは知ってるでしょう?あれは彼がノース卿のところで覚えたものだった。彼女もそのおかしな儀式をノース卿に教えられて、それにのめりこみ、家族とうまくいかなくなったあげく、行方を消した。 そのせいで彼女の家で死人がでた」
「死人が!?」
「ハドソンさん、どうか協力してください。 おれたちは警察官ではないけど、彼女を守る義務がある。それに、あなたと同じくらい、 ―― あのバーノルド事件を憎んでる」
ルイの言葉に口を引きむすんだ男が、わかりました、と事務所に引きかえし、それから今に至っている。
あれから、かなりの時間が経っている。
マイクが腕時計を確認し、ザックがうなるような声をあげて立ち上がったとき、薄暗い廊下のむこうで勢いよくドアがひらかれる音がし、かどから飛び出すように小走りのハドソンがあらわれた。
「みなさん、おまたせいたしました!」
何かに追われるように振り向きながら、片手にある鍵束を振って見せた。