穴 = 地下道
マイクが警備官たちをみまわした。
「ゴードンはノース卿に黙らされたってことか?」
ジャンが首をふる。
「ある意味な。ゴードンはノース卿と会う前は、発見し続けた『遺跡』について、ものすごい量の資料を作っていた。その大半が、ここにある『穴』の資料だ」
ジャンの発した単語に、「あな?」とマイクが首をまげる。
「ヤニコフにみてもらってて助かったな。『穴』が、ちゃんとした地図になった」
感心した様子でケンがテーブルに広げている紙をさした。
みおろして二コルもうなずく。
「こんなにたくさんの《穴》が遺跡発見時にみつかってたのに、新聞にものらなかったのは、ノース卿の力だろうな。しかも、それらの穴を、開発工事ですべてふさぐこともできたのに、残したのもノース卿の希望だ。 ―― これは、ゴードンにとっては喜ばしいことだったみたいで『自分の研究を後押ししてくれる』と資料にもかきのこしてる。・・・利用されたと知らずにな」
怒ったように息をはきだす。
ここまでの警備官の説明を頭の中で必死に整理しながらマイクが手をあげた。
「ちょっとまて。その『穴』っていうのが、まさかさっき言った、」
「そう。ゴードンは『穴』って書き記してるけど要は『地下道』だ。 それが、ノース卿の一存で、遺跡といっしょに今でも地面の下に残されてる。 たとえば街の下水道と平行して、とか、《地下鉄の路線をつっきって》とかな」
ケンが並べる紙は、みごとにこの近辺の地図になろうとしていた。