ゴードンが残したもの
マフィンを食べ終えたとき、二コルが部屋に紙袋をさげて入ってきて、みんなに朝の挨拶をした。
「 ―― バートは警察にいった。 さて、じゃあ、おれがヤニコフ先生にうけてきた講義をここでみんなにしてみせるか」
二コルが愛嬌のある目をむけるのに、マイクもうなずく。
紙袋からぶあつい紙の束をだすと、そこから選び出したひとつづりをマイクに渡してきた。
「これが、資料ってわけか?」
めくってみた資料の字の細かさに顔をしかめる。
知っているニコルの几帳面な文字とは違うものだった。
ひどく硬い文面にざっと目をとおしてめくってゆく手が、白黒の写真とおかしな図ののせられたところでとまる。
「これはなんだ?」
写真が添付された街の地図に『矢印』がしめされ、それに番号がふられ、何枚も続く。
最後には地図の『矢印』が一か所へとむかっていた。
「地下道の地図だ」
ニコルがかみしめるように発音した。
「『地下道』?どこの?」
「この街の」
「地下鉄のことか?」
「ちがう。ジェニファー・ハワードがきえた『地下道』のことだ」
「何だって?」
紙をめくり、そこに書き込まれた細かい文字をあらためてみる。
どうやらそれは、なにかの説明と数字だった。
「 ―― ヤニコフは、ゴードンが《のめりこんでいたもの》について、同じ学者という立場でみることもできる。 それに、おれたちの考えでは、ゴードンは《話の合う》ノース卿の城にとじこもってた。最後は城からとびだして外で亡くなったが、ローランドみたいなもんだ。ノース卿の城でおかしくなって、最後は外で悲惨な終わり方をする」
愛嬌のある目をまわしてみせる。
「つまりは、 ―― ゴードンもノース卿が《なにをして》いたか知っていて、ローランドみたいにノース卿とバーノルドをつなぐ証拠を残してるんじゃないかと思った。そこで、ゴードンがまだノース卿の城に入り浸る前に暮らしていた場所にあった本や研究資料を、ヤニコフに見てもらって、さがしてもらった」
「城に入り浸る前?そんなもの残ってたのか?」
「ウィルの親父さんがひきとってた」