№45 ― 時間がかかる(警備官ふくむ)
№45
何も変わらない状況で夜があけた。
昨日の、ギャラガーとのやり取りあとからを思いだし、またしてもマイクの頭に血がのぼりそうになる。
「手配をしてください ―― とりあえず、このメモにある場所に行ってみます」
『 待ちたまえ。子どもが持ってきたのは身分証と携帯なんだろう?それなら彼は銃を持ち続けてる可能性がある。ジェニファーが一緒だとしたら、どうにか彼女を守っているだろう 』
「っしかし!手足が自由なのかもわからない状況で」
『 落ち着きたまえ。相手はあのノース卿なんだ。すまないが、わたしにもう少し時間をくれないかね? 』
「どのくらいです?その時間がジャスティンの命を削っているんですよ。それを忘れないうちに連絡をください」
そのまま携帯を切り、警備官たちに、「劇場にいくぞ」と指示をだしのりこんだのに、二人を見つけられなかったのだ。
浮浪児から買った新聞の切れ端に書かれた情報だけを手に着いた中央劇場では、裏口で待たされたあげくに対応にでてきた男は、驚くほどかたくなにこちらを拒否した。
「だから、誘拐事件だって言ってるだろ?」ザックの言葉に、劇場の支配人だと肩書をしめしたあいては胸をそらすように、「ならば捜索許可状を」と言った。
マイクの警察官身分証で身分証番号を電話で確認してからもまだ胡散臭そうに警備官たちをみまわしていたので、ザックは腹をたて、ニコルに落ち着くよう肩をおさえられていた。
「許可状は、まだ、時間がかかるんです」
代表したマイクの言葉に、男は笑うように口をゆがめた。
「では、おひきとりください。本日はすでにすべての公演が終わっています。だいいちこのような場所に誘拐事件の犯人がはいりこむなどどう考えても無理があるでしょう」
「ムリって、ノース、っふが」ザックの口をおさえたルイが提案した。
「 では、劇場を閉める前の『みまわり』に、われわれを同行させてもらえますか? そちらの警備の方といっしょにまわって、よけいなところはのぞかなしい、さわりません」
「まあ、それならば・・・」
さっさと帰りたいと思っていただろう支配人はあとを警備担当の男に任せて帰っていった。