№44 ― 挑発(ジャスティン)
ようやく、終わりがみえてまいりました。。。。
№44
なめられているとジャスティンは腹が立った。
自分が管轄する場所にいるクソガキどもになめらるのとはわけが違う。
相手は、連続殺人犯だ。
支給された銃器は、この職に就いてからまだ十回ほどしか実際につかったことはなく、そのうちの三回は他の部署の応援のときだし、撃ったことは二度しかない。
弾倉を確認して装填する音が、静かなトイレの中でひびく。
特殊プラスティックを部分的に使用したその銃は、しょっちゅう解体して掃除する必要がない、扱いが簡単と評判の支給品で、製品としての基準は高い。
――― おれでも、うまく扱える。・・・当てられる確率も、高い
息を吸って吐く。
街中のどんな店のトイレとも違い、不快なにおいが少しもしない。
床を見れば黒い石には自分の靴がはっきりと映っている。
上着のポケットをさぐり、もう何度もみかえした文字を確認する。
この国の発行する最高額紙幣には、走り書きしたような黒いインクがジャスティンを挑発していた。
その女はここにいる!さあ早く!早く!待ちわびる女のもとへ!
「ちくしょお・・」
その裏にはこれから先の行動を指示する文があり、街中を歩きながら読んだとき、くしゃりと札をつかんだ逆の手で探した携帯電話は、なくなっていた。
自分の愚かさを呪いながらふりむけば、当然クソガキは消えていて、今度会ったら署に連行してやると思いながらも、当然のことだ、と子どもに金をつかませた男に腹が立った。
――― 金をもらったからじゃない。怖かったんだ
《クソガキ》の、今までみたことのないおびえた表情を思い出す。
金も地位もある貴族のあの男がコートをひるがえして歩く姿は、どういうわけかジャスティンには禍々しい『化け物』にしかみえなかった。