情報を買う
よくみると、身分証のかげに、紙がのぞいていた。
「『情報』を警察官にタダで渡すなんてありえないってさ。 マイク、買ってやりなよ。金ならかしてやるからさ」
いつの間にかそばにいたルイが、子どものきたないシャツのポケットに、たたんだ札を入れた。
そこでやっと、自分がいる場所に気づいたように、子どもの顔がこわばる。
「こ、これで商談成立だからな! あのクソ警官のこと、たのんだぞ!」
あわてて手にあるものをマイクにおしつけて、代わりにだされた札をひったくった子どもは、逃げるように部屋を飛び出していった。
二コルが嬉しそうに内線電話をかけ、お客さんがお帰りだから土産をもたせるように伝えている。
「さて、何が書いてある?」
会議室にいた警備官たちが、マイクが買い取ったものに寄ってきた。
干からびたような手触りの新聞紙の余白に、思いのほかきれいな字があった。
『 中央劇場 西館三階 六個目の部屋 きもい長髪のジジイ
ジャスティンを助けろ! 』
マイクが携帯をとりだし、通話相手に言った。
「 長官、ホースがノース卿にさらわれました。 目撃者がいます。 至急手配を―― 」
「これ以上的確な表現ないね」
ウィルが『きもい』を指さしたが、笑う者はいなかった。




