光去る
「―― カンドーラは、たしかに本物の力を持つ輝く存在でした。 彼といっしょにいるわたくしはあふれる『光』にいつも守られ、あの《存在》の声も届かなくなり、ゴードンという名前も忘れられました。 それほどに彼の『光』はすばらしいのです。 でも、 ―― 彼自身には、その『力』を感じたり、《見えない存在》を感じることもできず、そんな彼が自分で感じ取ることができたのが、・・・お金の力でした・・・」
うつむいたまま言葉がとぎれた。
「 会を大きくしはじめたとき、彼の周りの人間が、集まったみんなからお金をとっていたのです。それに気づいたわたくしは怒りました。彼の『力』は神様に愛された者しかもたないもので、それを分け与えるのにお金をとるのはおかしいといいました。ですが、彼らにしてみれば、分け与えるのにお金を取らない方がおかしいというのです」
「それは『取引』だよ」
自分の声に力がはいらないのをウィルは感じる。
「そうです。わたくしは必死に説明しました。本物の『神様』はそんなことなど望んではいないし、そんなことをすれば『取引』をしたことになる、と。ですが、・・・彼らにはその意味がわからないようでした。『神様』だって立派な教会が欲しいだろうと言うのです。 集めたお金は団体の運営費にあてるのだと勝手に決めてしまい、あろうことかカンドーラもそれに賛成してしまったのです」
マデリンきいてくれ、ぼくの『力』はみんなに与えるためにあるんだろう?
それならこの団体をもっと大きくして、遠くからも来てもらえるように宣伝しなきゃ
「 ―― その瞬間、彼は前の『光』を失いました。 ―― そして今までカンドーラといっしょにいたわたくしを守っていてくれていた『光』も去り、忘れかけていたあの声がはっきりと耳に届きました」
ゴードンにめぐみを