彼女の業務日誌
あらたに並び出た一覧を目にしてニコルが、これもまた手紙か、とうなるのに、うれしそうに一番上のファイルをひらいてみせる。
「これはねえ、彼女の業務日誌ってとこかな」
「『業務日誌』って、職場の病院で書くもんじゃねえの?」
ザックが横から首をのばす。
「ぼうや、よく知ってるじゃないか。そう。だからこれは、彼女の個人的『業務』の日誌だ。よく見てごらん」
「ぼうやじゃなくて、ザックだよ。―― これって・・・もしかして、・・」
「もしかしなくとも、無料のセックス業務についての細かい記載だよ」
そこには相手の職業から見かけ、どんなことをして、どんなことが喜ばれたかと、チェック印がついた《相手の言葉》がのせられていた。
「チェックをつけた相手とは、二度三度と関係を持っている」
眉間をつめたジャンが、男の方はこんなこと書かれてるなんて思ってもいねえだろ、と細かい字をおうのに、ルイがその肩をたたきながら画面をのぞきこんだ。
「たしかさ、ドナの恋人は、これを見せてもらったって言ってたよ。だから、二人の間に隠すことは何もなかったって」
ぱちん、とジョニーが指を鳴らした。
「そうだね。そう思うのはわかる。ドナは恋人と会う前の自分の汚いものすべてをさらけだした。だから彼女たちは恋人関係になった。―― だけど、この中には、恋人も気づかなかった『事実』が混じってるんだ」