№42 ― 録音した話(マデリンの証言)
№42
マイク・ベネットは額を親指で叩き続ける。
ジェニファー・ハワードはまだ見つかっていない。
ジャスティン・ホースもだ。
そのうえ、先ほど戻ってきたバートとウィルの報告で、とんでもないものをきかされた。
「 額に穴でも開けたいわけ?」
落ち着きなよ、と声をかけてきた男は落ち着いた様子でコーヒーを飲んでマイクをみた。
「ジャスティンが乗り捨てた車が見つかったって連絡あったんだろ?」
「あったけど、それだけだ。車が見つかってもしかたない。 ―― それより、ウィル、さっきの録音・・・、あれは、真実なんだよな?」
見つめられた男は前髪をはらい、「あんな作り話して、彼女になにか得でもある?」と聞き返す。
「・・・わかった。一応確認したかっただけだ。 ―― それならそれで、『認識』をあらためるだけだ。 たとえば、お前が意外とおもいやりのある男だった、とかな」
「ぼくはどんな女性にだって優しいよ」
居心地わるそうにカップを手に立ちあがった男をみおくりながら、さっききいたばかりのマデリンの『声』を思い出し、額を親指でマッサージした。
ジェニファーを再度見失い、倒れたマークが医務室へと運び出され、入れ違いでようやくバートとウィルがもどり、テーブルに置かれた器械ですぐに再生したのは、ケイトの母親であるマデリン・モンデルが、いままで誰にも言わずにずっと黙っていた、
―― 重要で、嫌な話しだった。
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